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「ライヴ・イン・ウィーン」担当ディレクターによる聴きどころ解説公開!
キング・クリムゾン ライヴ・イン・ウィーン2016+ライヴ・イン・ジャパン2015。担当でレクターによる聴きどころ解説

作品概要

 またライヴ・アルバムなのか、という批判は必ず出てくるだろう。2015年ツアー音源より高松公演をベースとして構成された『ラディカル・アクション』に続くキング・クリムゾンの新作は2016年12月のウィーン公演2日目を全編収録したライヴ・アルバムだ。

 当初は6月の2017年北米ツアー、ファースト・レグに合わせ発売される予定だったが、単にコレクターズ・クラブのスペシャルとして出すのではなく、『ラディカル・アクション』に続くオフィシャル作品にブラッシュ・アップしたいというロバート・フリップの意向でポスト・プロダクションをやり直したため、発売が延期となっていた。

 また、国内盤と輸入盤の価格差問題から日本盤オリジナルの特典を実現できないかという弊社からの意向を受け、DGMが特別に日本盤専用に制作したDISC-3『ジャパン・ツアー・オーディオ・ダイアリー』が実現した。2015年のジャパン・ツアー全10公演から1曲ずつ収録した初の完全ライヴ・イン・ジャパン・アルバムが遂に完成したのである。
 今回のリリース作品のポイントを箇条書きでまとめてみよう。

1.メイン・コンテンツは2016年12月1日オーストリア、ウィーン公演(2日目)当日演奏された曲を全曲収録。

2.日本盤、輸入盤ともにCD3枚組の編成だが、日本盤のCD-3に国内発売パッケージ専用の『ジャパン・ツアー・オーディオ・ダイアリー』が付く関係で輸入盤はCD3枚に振り分けられるウィーン公演音源が国内盤ではCD2枚に収録されている。輸入盤・国内盤を比較すると輸入盤にもボーナス・トラックが追加される予定だが、国内盤は『ジャパン・ツアー・オーディオ・ダイアリー』が追加される関係で収録曲数は国内盤の方が大幅に多い。

3.海外では10月から再開する北米ツアー、セカンド・レグに合わせ、コレクターズ・クラブの番外編的2017年ライヴ音源が先にCD化される関係で本作の発売は最短で2018年1月もしくはそれ以降となる。

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聴きどころ

 本人の頑固な性格からして、過去の名曲・人気曲をふんだんにセットリストに盛り込んだベスト・ライヴ的な興行はやらないだろうと、誰もが思っていたのを覆し、ロバート・フリップは2014年にキング・クリムゾンの歴史を総括した形のシリーズ・ツアー「ジ・エレメンツ・オブ・キング・クリムゾン」をスタートさせた。アーティスト、ミュージシャンとしての晩節を汚すことなく、その真摯なプライドを突き通すため徹底したリサーチと塾考を重ねた結果たどり着いたのが、自身がアルバム『スラック』時に実現させたダブル・トリオを上回るドラマー3人体制のキング・クリムゾンだった。
 ベテラン・バンドの「ベスト・オブ」ライヴにつきまとうサウンドが軽くなったり、楽曲のテンポが遅くなったりする難点を、キャリアは豊富だが、そこに安住することなく更なる高みを目指すアグレッシヴなドラマー3人がバンドに活力を与えることで克服。見た目はクラシックであってもエンジンは最新鋭かつ最大出力のものに積み替えたスーパー・マシーンとして再生したのである。  2014年のエレメンツ・クリムゾンは言うなれば試運転状態であった。だが、その高出力が生み出すサウンドはとことんアグレッシヴで荒ぶるキング・クリムゾンであった。
 2015年ツアーはこの必要以上に強大なリズム・エンジンを制御し、徹底的に磨き上げ、エレメンツ・クリムゾンのベースを完成させた記念すべきツアーであり、その成果は『ラディカル・アクション』として結実した。今回、国内盤だけに追加される『ジャパン・ツアー・オーディオ・ダイアリー』は『ラディカル・アクション』と共にプログレッシヴ・ロック・バンドとしてのライヴ・プレゼンテーションの究極のスタイルを堪能できる貴重な音源といえよう。エレメンツ・クリムゾンのベーシックが完成し、ツアーを続けることでとことん磨き上げられた2015年ツアーの最終盤、日本10公演の音源が追加公開されることは意味深い。

 話は去年の夏に戻る。『ラディカル・アクション』のプロモーションで来日したDGM社長兼プロデューサー、デイヴィッド・シングルトンから2016年のヨーロッパ・ツアーにはドラム・トリオの一角であるビル・リーフリンが離れ、ジェレミー・ステイシーが参加する。しかし、リーフリンは脱退ではなく2017年にはバンドに復帰し、2017年からはドラム・トリオがカルテットになる可能性が強い、という話を聞いた。それを踏まえた上でアルバム本編2016年ウィーン公演音源を検証していこう。結果から書いてしまえば、ロバートは2015年に完成させたエレメンツ・クリムゾンを再度スクラップ・アンド・ビルトしようとしている。完全に2017年にはドラムが4人になる、更にハイパワーになるエンジンに備えパフォーマンス自体がよりアグレッシヴなものにシフト。再び荒ぶるキング・クリムゾンが出現している。『ラディカル・アクション』、CD-3の『ジャパン・ツアー・オーディオ・ダイアリー』とのアレンジの違い、細かく見ていけば、先に発売されたミニ・アルバム『ヒーローズ』の2016年ベルリン公演で収録されたメイン・トラックとこのウィーン公演の同曲との質感の変化(ウィーン・ヴァージョンの方が躍動感がありアッパーな印象)など聴きどころは多々あるが、それ以前に、究極と思っていた2015年音源がどこか物足りなく感じるほどのハイパワー・パフォーマンスに圧倒されるのだ。

 これは間違いなく2017年にリーフリンが復帰し、ドラム・カルテットになった後、後方の弦・管楽器隊がそのハイパワーをどう制御していくかのシミュレーションも兼ねた変化だったのだろう。それにしても壮絶だ。メル・コリンズ、ステージ上で豪快に吹きすぎて倒れることのないように祈りたい。それくらいアグレッシヴな変化を遂げている。

 こちらがどう書こうが、また、ライヴ・アルバムかよ、という話があちらこちらで言われることだろう。発売元にしたって、同じことを思う。しかし、こうしてマスター音源が入ってきて検聴していくと「うわ、凄いな」と感嘆するのだ。アルバム『レッド』以来のストレートなアーティスト写真使用のアートワークのおじさんたちのドヤ顔をぜひ手にとって見てもらいたいものだ。どう考えてもロバート・フリップ、メル・コリンズ、トニー・レヴィンの3人の年齢足しただけで200年を越えるバンドの音ではないだろう。200年前なんてイギリスでは産業革命も起こっていないし・・・。

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最後に

 CD-3『ジャパン・ツアー・オーディオ・ダイアリー』には更にボーナス・トラックがある。2017年ツアーからの「アイランズ」のライヴ・ヴァージョン。エレメンツ・クリムゾンとして復活後、アルバム『アイランズ』からは「船乗りの話」、「ザ・レターズ」がセットリストの定番曲となっていたが、この秋発売の毎年恒例のボックス・セットが『ザ・セイラーズ・テール』と題された『アイランズ』を中心としたものになることを踏まえセットリスト入りを果たしたナンバーだ。

文:深民 淳

リリース情報

キング・クリムゾン ライヴ・イン・ウィーン 2016+ライヴ・イン・ジャパン 2015

キング・クリムゾン
ライヴ・イン・ウィーン 2016+ライヴ・イン・ジャパン 2015

■品番 IECP-10346/347/348
■仕様 3CD(2CD+HQCD)
■価格¥5,500+税
9月27日発売

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WEB SHOP INFORMATION
 ポール・ギルバート/PG-30 Zepp Tokyo 2016.9.26 
 キング・クリムゾン オン(アンド・オフ)ザ・ロード 40thアニバーサリー・ボックス・日本アセンブル盤
ジョー・エリオット&ダウン・アンド・アウツ 「
ザ・ファーザー・アドベンチャーズ・オブ〜アーティスト:ダウン・アンド・アウツ」 太っ腹の全買特典あり。
Web盤
エリック・マーティン/Over Japan DXエディション 。2015年来日し、念願のソロ公演を実現したエリック・マーティンの7月14日赤坂ブリッツ公演に加え、各地公演ダイジェストをパッケージごとに1公演ずつ収録。
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